2008年11月29日

『カプラン臨床精神医学テキスト』より(3)

 『カプラン臨床精神医学テキスト(DSM-IV-TR)』に挙げられた疫学の統計データの引用のされ方について、不満と疑問を持ったのは私だけだろうか?

 まず、用いられている統計データの対象者の範囲と人数が示されておらず、どこからどこまでの想定しての統計なのかもわからない。調査された年月や期間も記されていない。少なくとも科学の常識では、これらが必ず記されているがこれも入っていない。

 これが入っていないということは、臨床精神医学には科学では基本的な数学というものを重要視されておらず、容易に使われており、数学ではなく算数で計算されている可能性がある。

 数学上の統計が妥当性のものであるのかの吟味も成されていないまま引用されているのは容易に想定できる話で、日頃、natureなどで自然科学の報告書に目を通す事に慣れ親しんだ私には、あまりの杜撰さにぞっとした。

 実際に、その統計データが、実際の数字かといえばそういうわけでもないだろう。特に米国では犯罪や事件が日常茶飯事に起こっているわけであるし、事に、産婦人科系列で示すデータと照らし合わせても数字があわない。

 統計においては、統計モデルの小さな違いで大きく違ってくる。本来なら自然科学系の統計学を学んでほしいといいたいところだが、せめて最低限は人文社会科学系統計学を学んでいてほしい。

 また、米国と日本国内では、風土や民族の違いや習慣性などの違いがあるので、まず、どの地域のどの対象で調査されたのか、区別化して、生息する地域では違う事も想定した上で認識しなければならない。

 …っていうか、酷すぎるぞ、これ…。

 正直に言えば、次に示す統計は妥当ではないと考えられる。

 もっと厳密にいえば、データの使い方が妥当ではない。次に示すデータは、退役軍人を対象にされたもので、他のデータと混ぜてあるようだが、統計データ毎の対象にされたスケールが提示されていないため、妥当な予測さえ出来ない。

 この章で引用されている論文は2000年〜2002年までのものであるので、おそらくその当たりの論文で用いられたデータであろう。これを日本国民にそのまま適用するには難しい。

 このことに気がついている専門家はいるだろうか?

 というか、被虐待児を研究する医学博士も米国に入ることであるし、産婦人科や小児内科系からのデータも入手できるだろうに…。


### 16.5 外傷後ストレス障害と急性ストレス障害
   疫学
     『カプラン臨床精神医学テキスト』- p.677 ###

 PTSDの生涯有病率は、全人口の(…?米国のスケールかな?)約8%と推定されているが、これに加えて不顕性の障害が5〜15%で経験される可能性がある。

 外傷的出来事を体験した危険の多い集団では、生涯有病率は5〜75%の範囲に及ぶ、ベトナム戦争の退役軍人のおよそ30%がPTSDを体験し、それに加えて25%が顕在しない形でこの障害を体験している。

 生涯有病率は女性では約10〜12%、男性では5〜6%である。

*(疑問:米国には少なくとも4州は犯罪が多発することから、GPSで監視しようといった話も出ているだけ、犯罪が多発する地域は数多く存在する。このような米国の事件が多発する地域のものを想定すると、あまりにも低すぎる)

 PTSDはどの年代においても出現しうるが、若年成人に最も有用率が高い。それは彼らが症状の出現を促進する状況に身を置くことが多いためである。

 子どももこの障害に罹患しうる。

 男性と女性では、曝されやすい外傷の型、およびPTSDへの発展しやすさが異なる。

 生涯有病率は女性に有意に高く、またかなりの割合の女性がこの障害を発症する。

*(補足と考察:これは生体構造上の違いから来るもの。脳や肉体の構造において、男性と女性とは大きく違っている事は、今世紀に入って理学系では認識されており、natureだけではなく、Newtonでも取り上げられた。女性は腕力がないだけに、防衛本能が強く出来ている。女性がPTSDに至りやすいのは脳や生体の構造から来るその物性からの影響も大なり小なりあるかと考えられる。)

 歴史的には、男性の外傷は通常戦闘体験であり、女性の外傷は強姦が最も多い。

 障害は独身者や離婚したもの、寡婦(夫)、社会的に引きこもっているもの、社会経済的水準の低いものに多い。

私的には:だからこそ、出来るだけ現実的で妥当な統計を出すために、念入りの調査と、念入りの統計データの吟味が必要となる。)

 しかし、この障害の最も重要な危険因子は、その人物にとっての実際に曝された外傷の苛酷さ、間隔、近接度などによる。

*(私的な考察:だからこそ、周辺にある加害性の高い因子がどれだけあるのかの調査や分析も必要となる。例え医療機関でも、そこまで想定に入れなければ対応できないだろう。また、福祉や教育機関にも連携プレイを取れる形にしなければならなくなる。)

 この障害は家族的類型があると思われ、生物学的第一度親族者にうつ病の既往をもつ者は、外傷的出来事の後にPTSDになる危険性が高くなる。

*(補足:遺伝形質の影響については、昔から激しい議論が続けられているという。私的な見解では、分子レベルからの考察と、乳幼児からの人格形成も含む認知発達学などとの兼ね合いから、妥当なものだと考えられる。)


### memo ###

 特に、ASDやPTSD、C−PTSDなどのストレス障害の場合には、フラッシュバックで症状を悪化させる事もあることから、予めから予想とされる危険度を想定して対応するようにしなければならないので、該当者の活動範囲内での各スケールでの発症率や因子分析が必要となる。

 また、環境によってタイプも異なるため、出来るだけ多くのデータが必要となるだろう。

 尚、これらの具体的なデータについては、『トラウマティック・ストレス―PTSDおよびトラウマ反応の臨床と研究のすべて』で確認する事が出来る。

 本書はトラウマ性のストレスとその治療について、これまでの研究成果と臨床的知識を集大成したものである。様々な領域の専門家からなる執筆陣によって、1980年代に外傷後ストレス障害(PTSD)が定義されて以来行われた数多くの研究エッセンスが凝縮されている。

 また同時に、トラウマ体験後の適応の複雑さ、まだその有効性が確立されていないPTSDの治療法など、これから探求されるべき課題も提示している。

 記憶、解離、文化とトラウマの問題、生物学的及び心理学的プロセスの複雑な関係など、トラウマ研究の中心的な問題を取り上げながら、治療的介入が効果をあげるためには、PTSDが進行していくプロセスとその個々の段階について、深い理解が不可欠である事を明らかにしている。

 この本書では討論を重ね、深く議論され、ケースごとに応じて出来る限りの検証が行われている。深く考察されてのものであるので、本書を読むだけで十分なのかもしれない。

 但し、大まかな全体図を把握したい場合には、本書は典型的な学術の専門書であるので、難しすぎて気が遠くなるかもしれない。

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『カプラン臨床精神医学テキスト』より(2)

 『カプラン臨床精神医学テキスト(DSM-IV-TR)』を読んだ方で、英文慣れしている人が見た場合、翻訳が良くないことにすぐに気づかれるかと思う。

 natureを読み出した2000年前後(厳密には1999年10月より愛読中)当初は、翻訳がおかしかった場合には、「科学的なデータベースを示した報告書を取り上げる専門誌なのだから、少なくとも専門的な理学の知識を有している翻訳者にすべきだとブツブツと文句を言っては、辞書をかたてに翻訳していた。今では直接読んでいるので、本書を目を通したとたんに、英文の原本と取り寄せればよかったと今になって後悔している。


 さて…前回の『『カプラン臨床精神医学テキスト』より』、今回は、PTSDの歴史についてみていこうと思う。

 本テキストは、「DSM-IV-TR診断基準の臨床への展開」と副題がつけられたもので、関連する情報が多岐に渡って考察されながら取り上げられている。

 学生や専門家の間では主力とされているテキストとなっているらしいが、何分翻訳が酷い…。厳密にいえば、まともに翻訳されているものと、偏見が酷そうなものと、翻訳自体が直訳である場合がある。質としてはあまりよくない…^^;

 けど、次に示してみる。


### 16.5 外傷後ストレス障害と急性ストレス障害
   歴史
     『カプラン臨床精神医学テキスト』- p.677 ###

 自律神経系の心臓(…? 自律神経系に心臓はない。)の症状が出現(…??? 何が起こった?)するために、南北戦争の外傷後ストレス障害に類似した症状を持つ症候群に「軍人の心臓(Soldier's heart)(…おい、直訳かい^^;)」という名称が与えられた。

 ダコスタ(Jacob DaCosta)が1871年の「過敏性心臓について(On Irritable Heart)」(やはり…)という論文でそのような軍人(…? なんやねん?)について記載している。


 笑いが止まらなくてしょうがないんで、ちょっと休憩する。

 要は「○○の心臓」というのは、生物学的には「感受性」のことで、精神医学や一般の医学ではヒステリー状態及び拒絶反応といったところだろう。

 以下は休憩後、残りのデータを追加して再更新したもの。


 1900年代には、特に米国では精神分析の影響が強かったので、臨床医たちは、この状態に「外傷神経症(tramatic neurosis)」の診断を適用した。

 第一次世界大戦において、この症候群は砲弾ショック(shell shock)と呼ばれ、砲弾の爆発による脳の外傷の結果であるとの仮説が立てられた。

 1941年に発生したボストンの Coconut Grove という混雑していたナイトクラブでの火事の生存者は神経が過敏になり、疲労感があり、悪夢があることが認められた。

 第二次世界大戦の退役軍人・ナチ強制収容所の生存者・日本における原爆の生存者は、類似した症状を持ち、時に戦争神経症(combat neurosis)または戦争消耗(operational fatigue)と呼ばれていた。

 結局、ベトナム戦争の退役軍人に認められた精神医学的病理が、現在知られている外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder : PTSD)という概念として結実した。

 これらのすべての外傷的状況において、この障害の発症は、ストレス因子の強度と相関していると考えられる。

 つまり強制収容所のような最も重篤なストレス下では、この障害の出現は犠牲者の75%を越えることになる。


 本テーマの内容から、なんだか別の意識に(おかしな感覚の方向に)飛んでしまいそうだが、どうだろうか。上記の情報を整理すれば次のようになる。

 つまりは、1871年には報告され続けていたが、この当時は軍事医療の兼ね合いから、精神分析や臨床精神医学にはこれらの報告は、軍事機密情報として民間に反映されていなかった、ということなのだろう。

 実際に民間に反映されるようになったのがベトナム戦争の退役軍人に認められた精神医学的病理だったから、これが土台となったという話となる。

 これについての詳細は別の本書で述べられていたので、また別の機会に取り上げよう。

 次回の判断基準改定版は英文原本を入手しようと思う。

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2008年11月28日

『カプラン臨床精神医学テキスト』より

 『カプラン臨床精神医学テキスト(DSM-IV-TR)』においては、外傷後ストレス障害や急性ストレス障害は、16章の不安障害の枝に記載される。

 DV環境で胎児期から被虐していた場合には、ASとPTSD(p649,p.677-686)と虐待ネグレクト(p.951-962)を参照のこと。

 尚、胎児期時の被虐研究については、最近産婦人科系の医学博士の研究から提唱されてきているもので、母親が受けるDV環境が胎児に大きな影響を及ぼすことがわかり、産婦人科では一般常識化してきている。これらの知識は教育関係や行政機関が問題として取り上げ、「DV問題(ドメスティック・バイオレンス)」を社会問題として対策に取り組んでいるが、こういった知識は、臨床精神医学上の診断基準にはまだ繁栄されていない。こういった場合には単発的なPTSDではなく、複雑性といわれるC-PTSDに該当する。


 翻訳があまりよくないようなんで、これを購入した後で、原本を仕入れればよかったと、後で後悔したのだが、データ整理のために、参考に示す。


### 16.5 外傷後ストレス障害と急性ストレス障害
     『カプラン臨床精神医学テキスト』- p.677 ###

 外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder : PTSD)は、強い外傷的なストレス因子となるものを、見たり、聞いたり、或いは、それに巻き込まれたりした後で起こる症候群である。

 そのような経験に(…?)、恐怖や絶望感をもって反応し、出来事を持続的に何度も体験し、思い出すことを出来るだけ避けようとする。

 診断するには出来事の後、1ヵ月以上続いていなければならないし、家族や仕事のような生活の重要な領域に重要な影響を及ぼしていなければならない。

 精神疾患の診断・統計マニュアル第4版(「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th edition, Text Revision : DSM-IV-TR」)には、急性ストレス障害と呼ばれる PTSD と似た障害が定義されているが、それにはPTSDより早く(出来事から4週間以内に)起こり、2日から4週間以内に消褪する。

 もしも症状がそれより長時間続いたら、PTSDとするのが妥当であろう。

 急性ストレス障害(Acute Stress disorder)とPTSDの両方を起こすストレス因子は、たいていの人を病気にするのに十分なほど圧倒的である。

 そのようなストレス因子は、戦争・拷問・自然被害・暴力的襲撃・強姦・そして例えば車や火災中のビルの中でのような危機的な事故での体験から生じる。

 夢や日常の思考の中で外傷的な出来事を再体験し、その出来事を思い出させる可能性がある、あらゆることとを避け、過覚醒の状態と共に無感覚に陥る事を体験する。

 他の症状は、抑うつ・不安・そして集中力低下のような認知障害である。

posted by 0≠素子 at 22:08| Comment(0) | 臨床精神医学の Date Base | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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