2009年02月03日

一般身体疾患による人格変化:ICD-10の判断基準

 人格障害者のうち、『一般身体疾患による人格変化』というのがある。

 つまり、代表的なものとして、てんかん、頭部外傷、脱髄疾患、感染性疾患、免疫疾患、内分泌疾患、代謝性障害、栄養障害…とこんなもんでも立派に人格障害を引き起こす。

 凶悪犯罪のうち、脳の損傷や脳機能不全によるものが原因とするものは珍しくはない。


 ICD-10においては、身体疾患に関連する精神疾患には2つ区分がある。その1つは脳の疾患、障害および機能不全による人格および行動の障害であり、もう一つは脳の損傷および機能障害ならびに身体疾患によるその他の精神疾患である。

### ICD-10 の F 07 脳疾患、脳損傷および脳機能不全
  による人格および行動の障害の判断基準 ###
(Personality and Behavioural Disorders Due to Brain Disease, Damage and Dysfunction)

G1. 脳の疾患や脳損傷または脳機能不全の客観的証拠(身体的診察・神経学的診察・臨床検査から得られる)、および/またはその病歴があること。

G2. 意識混濁や著明な記憶欠損を欠くこと。

G3. 惹起された人格障害または行動障害が、F 60-F 69に該当すると示唆する根拠がないこと。

▼F09.0 器質性人格障害(Organic personality disorder)

A. F 07 の全般基準を満たすこと。

B. 次の特徴のうち少なくとも3項が6ヶ月以上存在すること。

(1)目標指向性の活動を持続する能力において一貫した減弱を見ること。とくに、そのために、活動が長時間を要したり先延ばしになる。

(2)次の常置著変化のうち1項以上認めること。

 (a)情緒不安定(制御されず不安定で変動しやすい情緒表現)
 (b)環境にそぐわない多幸。浅薄で不適切な冗談
 (c)易刺激性、および/または怒りや焦燥の爆発
 (d)無欲性

(3)結果や社会的慣習を考慮することなく、欲求や衝動の表現を抑制することができていないこと(対象者は、盗み、不適切な性衝動、無茶食い、あるいは身心の不衛生さなどの反社会的行動にとらわれている。

(4)典型的には、次に示すような形式の認知障害をみる。

 (a)過度の猜疑心と妄想観念
 (b)宗教、あるいは「正義と悪」という点から他者の行動を堅苦しく分類するなど単一のテーマに関する過度のこだわり。

(5)疎遠、過包含、粘着性、過書などの特徴をともなう、言語表現の速度や表出の顕著な変化。

(6)性行動の変化(性欲減退あるいは性的嗜好の変化)
 
▼臨床特徴からみた亜型の特定

【特定例1】
 基準(1)と(2)(b)項の症状が著しく優位であれば仮性遅滞型や無欲型、(1)・(2)(c)および(3)項が優位であれば偽精神病性の型と考えてよい。(4)・(5)・(6)項がともにあれば、辺縁系てんかん性人格症候群の特徴とみなす。今のところこうした概念の何れも、独立して記載できるという妥当性は確定されていない。

【特定例2】
 必要であれば、次の型の分類が特定される。つまり、易変型、脱抑制型、攻撃型、無力型、妄想型、混合型、およびその他の型である。

▼F07.1 脳炎後症候群(Postencephalitic syndrome)

A. F 07 の全般基準を満たすこと。

B. 次の残遺性の神経学的機能障害のうち少なくとも1症状を認めること。

 (1)麻痺
 (2)聾
 (3)失語
 (4)構成失行
 (5)失算 

C. この症候群は、可逆的であり、その持続時間が24ヶ月を超えることは稀である。

【コメント】
 判断基準Cが、器質性人格障害(F 07.0)と主たる鑑別店である。
 ウイルス性はまた細菌性の脳炎後に起こった残遺性症状や行動変化は、非特異的なものであり、臨床診断にとって十分な根拠が提供されているわけではない。それらの症状には、次のものが含まれる:全身倦怠感、無欲性、易刺激性、認知機能の若干の低下(学習困難)、睡眠覚醒パターンの障害、性的行動の変化。

▼F07.2 脳震盪後症候群(Postconcussional syndrome)

注:この症候群の疾病分類上の地位は曖昧であり、F 07の最初にあげた判断基準のG1項は必ずしも確認できないことがある。しかしながら、この状態に関する研究を行うためには、次のような診断基準が推薦される。

A. F 07の全般基準を満たすこと。

B. 発症に至るまでの4週間に、意識消失を伴う頭部外傷の既往歴があること(脳波、脳の画像診断、あるいは眼心図などにおいて、脳損傷の客観的証拠を欠くことがある)。

C. 次のうち、少なくとも3項が存在する。

(1)不快な感覚や陣痛の愁訴、例えば、頭痛、めまい(ふつう真性めまいの特徴を欠く)、全身倦怠感、過度の疲労、騒音に耐えられない。

(2)情緒の変化、たとえば、易刺激性や情緒的不安定性(いずれも情緒的興奮やストレスによって容易な誘発または増強させられる)、ある程度の抑うつ、および/または不安。

(3)集中困難や精神的労作の遂行困難、および記憶障害の主観的訴え(心理検査などで明らかな異常はなく、客観的な証拠を欠く)。

(4)不眠。

(5)アルコールへの耐性の低下。

(6)心気的に超過大評価された観念や、病人に役割に甘んじるほどの、上記症状へのとらわれと脳損傷が永続的ではないかといった恐れ。

F07.08 脳疾患、脳損傷および脳機能不全による他の人格および行動の障害(Other organic personality and behavioural disorder due to brain disease, damage and dysfunction)

 脳疾患、脳損傷および脳機能不全によって、認知・情動・人格・行動における種々の障害が生じうる。それらの中には、F 07.0-F 07.2の項には分類できないものもある。しかし、そのような症候群は疾病分類学的に不確実であるので、「その他」として、ここに含めておくべきである。必要であれば、個々の特徴を表す為に、第5桁の数字を使ってよい。

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